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「無駄な抵抗はお止めなさい!」
私の放った声が、地下牢の荒んだ空気を美しく彩ります。
それに反応し、旦那様を襲っていたメイドが私に向き直りました。
「げっ……! なんで普通のメイドが銃を持ってるのよ~」
茶髪のメイドは、私を見て大層驚愕し、慌てて背中から脇差しを抜き、鉄格子の隙間から旦那様の首を落としました。
「だ、旦那様っ!?」
なんとも迂闊でしたわ。
慌てた振りをして旦那様を奇襲するなんて……。
「どいてっ!!」
その刹那、呆然とする私を押し退けて、メイドが階段を駆け上がります。
「冥土君、急いで追ってくれ!」
落ちた首を拾って抱えたまま、旦那様が私に指示を出します。
「生首で話すのはお止め下さい。私の豊富な語彙力をもってしてもキモいという言葉しか出ませんでございますわ」
私は旦那様へ簡潔に返答し、茶髪のメイドを追ったのでございます。
※※※
「動かないで! これ以上動いたらこの庭師を殺すわよ!」
茶髪のメイドは庭まで逃げますと、植木の刈り込みをしていたヨーゼフを捕らえ、人質にしました。
ジリジリと距離を詰めたり離れたり。
結局、今は場所が入れ替わり、茶髪のメイドが屋敷を背にして立ってございます。
「フフ……。はったりが上手ですわね」
ヨーゼフに銃口を向けるメイドに、私は嘲笑混じりで呟いたのでございます。
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