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「あ、冥土さん! この前はすみませんでした。お詫びとして、クッキー焼いてきたんです。良かったらどうぞ!」
そう言って、桜子が私に何やら可愛らしくラッピングされた包みを手渡してきます。
あら、少しは可愛い所もあるようでございますわね。
「あの時の冥土さん、本当にかっこよかったです! これから色々ご指導下さいね! よろしくお願いします!」
う……。
誉められて悪い気はしないのですが、何か雰囲気が不穏でございます。
桜子が私を見る目に、時折奥様が私に向ける、鳥肌が立ちそうな感情が入り交じっている気がしてなりません。
まさか桜子さんもそっち系の人なのでしょうか。
非常に勘弁でございますわ。
「あ、それ割れ物だから気をつけて下さいねー」
そんな事を考えています内に、トラックから、布にくるまれた円筒形の巨大な物体が、いくつも運び出されました。
「……あれはなんでございますの?」
「あ、ホルマリン漬けですー」
「ホルマリン漬け? 何の動物の?」
「元カレ」
ピキッ! と空気が凍りつきます。
「私、好きな人にはずーっと側に居て欲しいんですよね。ああして置けば、二度と私から離れないし、私以外の人を見たりもしないじゃないですかー。ナイスアイディアですよね?」
サラリと何やら物騒な事を言ってのける桜子。
この子、想像以上に曲者ですわ……。
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