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「……それより冥土さん。クッキー、食べないんですか?」
ニッコリと微笑みながら私に催促の言葉を投げ掛ける桜子に、私は戦慄を隠せませんでした。
ラッピングをほどけば、立ち上るアーモンドの香り。
しかも市販されてるアーモンドではなく、摘みたての生アーモンドのような……。
良く見たら、先ほどから次々と運び込まれている円筒形が、一つだけ私の後ろに置かれてございます。
「本当にかっこよかったですよ。冥土さん」
にたぁ~と笑う桜子。
なんかもう色々読めましたわ。
さて、このクッキーどうしてくれましょうか。
――その時。
「あ、冥土さあん! おっはよーう! 今日も青空が青いね!」
蹴り倒したくなるほどにハッピーな声で、庭師のヨーゼフが私に呼び掛けました。
横にはミランダも居るようですわね。
「あ、冥土さん! なにそれクッキー!?」
桜子への挨拶もせずに、私のクッキーに興味を示すヨーゼフ。
その性格が破滅を呼ぶのですわね。
「ええ、クッキーですわ。一枚いかが?」
私が輝くばかりの笑顔を載せて優雅に誘うと、ヨーゼフは満面の笑みでクッキーを口に含みました。
「これは美味い! 甘味の中で主張するアーモンドの香りぐふぅぅっ……!」
「いやあああああ! ヨーゼフゥゥゥ!」
血を噴いて倒れるヨーゼフ。
ミランダの慟哭が庭園に響き渡りました。
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