メイドと執事のご奉仕対決

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  「うぅ……。酷いですよ冥土さん」 「正当防衛ですわ。さ、早くついてきなさい。今日中に屋敷の間取りを覚えて頂かなくてはならないのでございますから」 私を毒殺しようとした桜子の眉間に穴を穿ち、私は屋敷の案内をしておりました。 何分、広い屋敷でございます。 しっかり案内しなくてはなりませんわ。 後輩の黄泉なんて、就任早々、屋敷内で遭難して餓死しておりましたし。 それにしても、なぜにあの変態の旦那様が、このような財を築けたのか不思議でなりませんわ。 聞くところによると、どこかの高校の校長をしているとか。 あのウンピエールに教えを受けた若者がどう育つのか、考えたくも御座いませんわね。 ちなみに、旦那様は何故か、校長をしている時には偽名を使っているそうで御座います。 名前を使い分けることに憧れがあるとか言ってましたが、どこの中二でございましょうか。 更に言えば、校長としての名前は『江呂山(えろやま)』。死ねばよろしいですのに。 まあ、当の旦那様は今日、珍しく仕事のようでございますわ。 何でも、学校で体育祭があるとか。 夕方までは、あのウンピエールの顔を見なくて済むと思うと清々いたしますわね。 と、そんなことを考えています内に、目の前に毎日私が磨いている大理石の廊下が広がり始めました。 しかしその先には、今私の一番見たくない顔があったのでございます。 「おや、これはこれはマドモワゼル。ご機嫌はいかがでございますか?」 「あら、これはこれはウンピエール。私は忙しくて大変ですわ。貴方はお暇そうで良いですわね。セバスチャン」 いきなり私の視界を覆うほどに近づいてきて、気障な笑みを浮かべるこの男。 この屋敷の執事、セバスチャンでございます。  
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