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「どうしましたの冥土さん? なにかボーッとしているようですけど」
「あ、いえ、奥様の波乱に満ちた人生に思いを馳せ、心の内で涙を流しておりました」
おっと、危なかったでございます。
私としたことが、私情を悟られそうになるなど、とんだうっかりでございましたわ。
しかし怪我の功名。
私の咄嗟のフォローで、奥さまはニコニコと相好をお崩しになられたのでございます。
……全然フォローになって無かった?
黙らないと貴方の頭からトマトが噴き出しますよ。
「あらそう。可愛い子ね。今夜私の部屋にいらっしゃい? 可愛がってあげるから」
出ました。
奥様は男女問わず、気に入れば全て自分の物にしたいというお方なのでございます。
確かに奥様はお美しいとは思いますが、同じ枕で朝日を眺める気は毛頭ございません。
しかも、もし黄英様にバレたら、私の首が飛ぶ事になります。
ここは丁重にお断りする事に致しましょう。
「奥様、ご冗談はほどほどに。最期の景色に銃口を見たいのでございますか?」
私は、スカートをたくしあげ、この美しい足を包むガーターに装着された銃、センチメーターマスターを奥様に見せつけました。
銃刀法?
そんなもんじゃ私は縛れないのでございます。
「あらあら? 素敵な銃ね。黄英のよりも大きくて太……」
――パァン!!
奥様の言葉が終わらぬ内に、私の愛銃が火を噴きました。
額に穴を空けた奥様が大理石の床に赤いプールを作って倒れ込みます。
ああ、緑じゃありませんでしたね。
ともあれ、私の眼前で下ネタをかます輩は誰であろうと許さないのでございますよ。
さて、朝の勤めはこれで終わりです。
早く旦那様を起こしに行かなくては。
戻って来る頃には奥様も元気に食事を摂っておられるでしょう。
奥様は撃たれて死んだんじゃ無いのかって?
細かい事気にしてると、ランチに銃弾食わせますわよ?
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