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「で、貴方はこんな所で何をしてらっしゃるのですか? ここはもう私が完璧に磨き上げてございますわよ? サボってる暇があったら、自分の仕事でも探せばよろしいのでは無くて?」
「ははは。これは心外ですね。私はこの子を届けに来たんですよ」
そう言ってセバスチャンが、後ろを向きます。
その背中には黄泉が背負われていました。
「彼女が道に迷って行き倒れていましたのでね。ここまでお連れしたのですよ。全く、自分の部下くらい、しっかりと管理して欲しいものですねえ。冥土さん?」
あらあら、私に嫌みを言うなんて、なんと忌々しいウンピエールバトラーでございましょう。
人を背負っている事が分からないほどにスムーズな所作も気にくわないでございますわ。
「あらあら、それはありがとうございます、セバスチャン? ただ、前回屋敷が襲撃されたときに、何も気付かずにぼんやりしていた貴方に、仕事云々で文句など言われたくはございませんわねえ?」
私の華麗で挑戦的な言葉に、セバスチャンが唇を噛み締めます。
あらあら、良い顔ですわ。
まるでハエ取り紙に捕らわれてもがく銀蠅のよう。
「奥様に可愛がられているからこそ、この屋敷に居られる執事の分際で、奥様のピンチにも駆けつけられないなんて、使えないにも程がありますわね。あえて言って差し上げましょうか、カスであると」
私の唇が華麗な旋律を奏でる度、セバスチャンの表情が苦痛に歪みます。
ふふふ、良い気味ですわ。
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