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結局、状況を打開する術は思いつかないまま、勝負の時間になりました。
仕方ありません。桜子と黄泉を信じると致しましょう。
「いらっしゃいましたね、冥土さん」
キッチンでは、優雅に座る奥さまと、気品に溢れた、あまりに不快な笑みを浮かべるセバスチャン。そして二人の執事が立っておりました。
褐色の肌に長い銀髪を持つ、目付きの悪い執事の名はイシュタール。
テカテカの肌にスキンヘッドを輝かせる、マッシブルな執事の名は本田マッスル。
二人とも、セバスチャンの側近とも言える有能な執事でした。
まあどちらも私に言わせれば小者ではございますが。
「楽しみね、大好きな紅茶がたっぷり飲めるなんて」
「はい。では早速始めましょう。執事チームはイシュタールを出します。メイドチームは……」
「黄泉で行きますわ」
私は、後ろで不安そうにしている黄泉に目を向けました。
「め、めめめ冥土さん……。私……」
「……大丈夫でございますわ。私がティーバッグを用意してございます。これを入れてお湯を入れればそれで終いですわ」
不安に身を震わせる黄泉に対して、私は悪魔も恋に落ちる笑顔で返します。
とりあえず、紅茶が完成出来れば良いのです。
ティーバッグを入れるだけなら、いくらなんでも大丈夫でしょう。
私は軽く息を吐いて、戦場に赴く黄泉を見つめました。
「では、イシュタールVS城之内黄泉、試合開始!」
セバスチャンの声で、戦いの火蓋が切って落とされました。
それにしてもこいつ、なんでこんなにノリノリなんでございましょうか。
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