950人が本棚に入れています
本棚に追加
「本当に美味しいわ、この紅茶。もう一杯」
「はいな!」
さて、奥様は依然として桜子の紅茶に舌鼓を打たれてございます。
よほど、お気に召されたようでございますわね。
これは桜子の今後が期待できそうですわ。
「本当に美味しい……。もう一杯!」
「ほいさっさ!」
「ああ~……! 凄いわ、もう一杯!」
「いえっさー!」
「紅茶……紅茶あああ……」
「はいはい~♪」
ん? 何だか奥様の様子がおかしくなってまいりました。
「紅茶ぁぁ! 早く桜子さんの紅茶をぉぉ! ヒィーッス……ヒィーッス……」
何やら荒い息をあげ、その舌を首の下まで伸ばして紅茶の一滴まで舐め啜る奥様。
これはまさか……。ああ、悪い予感が当たりましたわ。
「いやん奥様、素敵なお顔ですわぁぁ……。もっと、もっと飲ませて差し上げますぅぅ」
そして桜子が恍惚とした表情で、奥様のお口に直接、紅茶を注ぎます
「紅茶あ! 紅茶あ! ああ、紅茶……幸……せ……」
「奥様!?」
途端に机に突っ伏す奥様を見て、私とセバスチャンが駆け寄ります。
「あ……。ごめんなさい。薬を入れすぎちゃいました、テへッ☆」
駆けつけた私達が見たものは、既に事切れた奥様の姿。
あ~あ、やっちまいましたわ。
「仕方ありませんわね。奥様の死亡により、今回はノーゲームと致しましょう」
「ちょっ……! そんな簡単に……」
「さ、行きましょう桜子。まだまだ仕事は残ってございますわ」
「あいあいさー」
後ろで何やら慌てているセバスチャンを残し、私と桜子は悠々とキッチンを後にします。
こうして、四人もの死者を出した壮絶なバトルはひとまずの終焉を迎えたのでした。
最初のコメントを投稿しよう!