雨宮家の人々

5/13
前へ
/44ページ
次へ
  「全くひどいじゃないか、主に発砲するなんて」 「申し訳ありません。あまりに不快でしたので」 ようやく目覚めてベッドに腰かける旦那様が、額からトマトジュースを流しながら私に説教をします。 ちなみに私、後悔も反省も全くしておりません。 「まあいい、ちょっと待っててくれ。身だしなみを整える」 そう仰って、旦那様がボサボサの寝癖頭を手ぐしでオールバックに整え、ひんまがった口髭の形を両手でくいっと直します。 ……旦那様の御手は、どれほど脂ぎっていらっしゃるのでしょう。 想像したくもありませんね。 「ん? 冥土君、ちょっと来たまえ」 旦那様が私をベッドに誘います。 今度は股間を撃ち抜いて欲しいのでしょうか。 「今日の空があまりに綺麗なのだ。君も見ると良い」 どうやら下心は無いようでございますね。 まあ勿論、いきなり押し倒された時の用心は怠りません。 私は旦那様に寸分違わず銃口を向けながら、ゆっくりと隣に腰かけたのでございます。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

950人が本棚に入れています
本棚に追加