蝉しぐれ

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    「菊」   「なんですか、ルートヴィヒさん?」   「桜はそろそろ咲きそうか?」   「そうですね…。そろそろだと思いますよ」   「そうか」   「どうしてです?」   「…いや、ちょっと気になっただけだ」   「そうですか」   「……俺の家にも、植えてみるかな」   「綺麗ですよ、きっと」   「そうだろうな…」   「でも」   「……?」   「こうやって、私の家に桜を見に来る機会が減ってしまいそうで…なんだか寂しいですね」   「……」   「…な、なんて……。」   「やっぱり」   「やっぱり?」   「お前の家で見るのが1番いいな」   「それは何故です? わざわざこんな拙宅に来られなくても――…」   「自分の家で見るのもそれはそれでいいかもしれんが、やはり菊の家にあっての桜だと思って、な」   「…そう、ですか?」   「あぁ。」   「そう、ですか…」   「それに」   「それに?」   「もう、そんな悲しそうな顔をしなくてもいいだろう?」   「……して、いましたか?」   「少なくとも、俺にはそう見えた。」   「そう、ですか」   「あぁ。そう、まるで―――。」   この桜のような。   「……美しいな」   「えぇ。我が国の自慢です」     「―――菊」   「はい、なんでしょう。ルートヴィヒさん?」   「勝つぞ」   「はい。私達は勝たねば」   「……」   「もう…後には引けないのです。」   「そう、だな」   「……この≪身:桜≫が散る前に――――。」         青年には、ひどく桜が似合いました。                    Fin
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