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急に雨が、降ってきた。
どんよりとした鉛色の空が泣いている。
ティノは、雨が嫌いだった。
「あーあ…」
今日は親友のエドァルドと一緒に買い物に行く予定だったのに、これじゃ台無しだ。
そんな風に心の中で悪態をつく。
今日 降らなくたっていいじゃないか。
しばらく空とにらめっこをしていると、空が朱色に遮られた。
ステンレスの骨が見えることからそれは傘で、差し出した人物がベールヴァルドという事はすぐにわかった。
…のだが、いきなりだったのと いつものしかめっ面だったため、必要以上に驚いてしまった。
「いひゃあぁあっ……ぁあぁはははは、こ こんにちはベルさん…」
「ん」
「どどうしたんですか?」
「…おめがいだっけ…」
「ぼ、僕がいたから?」
「………」
「そ、それだけですか?」
「ん」
会話が止まった。
されど、雨は止まってはくれない。
「あの」「なぁ」
「す、すみません」
「えぇど」
「いや、ベルさんからどうぞ」
「…おめがそう言うなら」
そう言うと、一呼吸置いてからベールヴァルドはぽつりと切り出した。
水のように透き通った凛々しい瞳に、やや遠くに見える丘をうつして。
「……空いでっか?」
「これから、ですか?」
「ん」
「エドァルドと買い物に行くよていだったんですけど…この調子じゃ、次回に持ち越しみたいです」
「……んだら、俺と付き合ってさくんねか?」
「いいですよ。ベルさんから誘ってくれるなんて珍しいですね? どうしたんですか?」
「……おめに、見せたいものさあっから」
こ。
ポツリとベールヴァルドは呟くと、ティノの手を引いてずんずんと歩き出してしまった。
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