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ぬかるみに足をとられながら、必死についていく。
「わっ」
急にベールヴァルドが立ち止まったため、ティノは思いっきり鼻先から彼の広い背中にぶつかってしまった。
反動で数歩よろめくと、にょっと伸ばされた白い腕に引き寄せられる。
気づくとベールヴァルドのすぐ近くにいた。
「あ、ありがとうございます…」
「ん」
眼鏡の奥から、鋭い瞳が見つめる。
しかし、今は鋭いながらもその眼差しは柔らかい。
ふと、ベールヴァルドが長くて綺麗な指でそっと何かを示した。
「わあっ…! 紫陽花ですよね!」
「ん」
「こんなところに沢山……! すごい!」
「……誰もわがんね」
「じゃあ、僕達だけの秘密の場所ですね!」
「…んだな」
2人だけの秘密の場所。
そこには、梅雨の時期だけだけれど。
澄んだ綺麗な薄紫の紫陽花と、優しい柔らかな水色の紫陽花が咲き乱れている。
08.06.30 Fin
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