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あなたは何処にいるのですか?
時間だけが狂ったように進んで、帰り道がわからないのです。
だから あなたを待って、待っているというのに……。
「何処にいるのですかアーサー…」
「お前の後ろだよ、菊」
ふわりと香る懐かしい匂い。
ゆっくりと背中に伝わる微かな体温。
しっかりと握りしめるてのひら。
「探したのですよ、アーサーさん」
ぎゅっと握りしめる力を強めると、そっと優しく抱きしめる力を強めてくれる。
普段は見れない、優しい本性。
「なぁ菊」
「はい」
「もう1度呼んでくれ」
「はいアーサーさ「さっきみたいに呼び捨てで…さぁ?」
子供みたいに拗ねた口調のくせに、声音はひどく大人びているものだから困る。
肩が、震えていた。…何故?
「…何度だって呼びますよ。だから、泣かないでくださいアーサー?」
「泣いてなんかない…」
これだから面白い。
真実を抉ると、全くの真逆の言葉を返す。
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