10435人が本棚に入れています
本棚に追加
「私、ちょっとヘマしちゃったかもー」
何が?と即聞かれ、少し戸惑いかけたが、私は亜以子チャンを見ずに言った。
「直太の事。ヘマしちゃったかも。
酔っ払った勢いで部屋行って、迷惑かけちゃってさー」
私、笑えてる……?
それだけが、気掛かりで。
亜以子チャンの、顔を見る事が、出来ない。
「……何かあった?」
何か、あった。
何かが、ありすぎた。
木田さんと飲んで、喋って。
酔った勢いで直太の部屋に行って。
酔っ払った勢いで、直太に触れようとした。
「何かあったって言う程の事でもないんだけどさ?
まぁ、簡単に言うと、もう直太とは会えないなー、みたいな」
笑うのは、私だけで。
亜以子チャンは、何も言わない。
「だから大変申し訳ないんだけど、暫く事務所に取りに行くの、亜以子チャンにお任せしてもいい?
その代わり、今まで以上に精出して働くからさー」
そう言って、何とか亜以子チャンの方へ顔を向ける事が出来た、が。
彼女は、一つも笑っていない。
最初のコメントを投稿しよう!