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「美沢ちゃんは、好きな彼とか、いるのかな?」
その言葉に、真っ先に浮かんで来る顔が、あった。
“居るんだね”と言われ、顔を少しうつむかせた。
「じゃぁ美沢ちゃんは、彼のどこが好きだか、答えられる?」
少し、考えてみても。
……私は、その質問に、即答する事が出来なかった。
「……分からないです」
分からない。
どこを、って聞かれても。
そんなの、分からない。
ただ、ずっと、直太の事ばかり、頭にあるって言う事だけは、分かる。
四六時中、直太の事で、頭がいっぱいになる。
「まぁ、色々な好きの形って言うのがあるとは思うけど」
“父”は、続けた。
「分からないけど好き、って言うのは、きっと、無条件で彼を好きって事なんじゃないかな?」
その言葉に、私は顔を上げた。
笑顔で、私を見ている。
「見返りを求めるでもなく、優しいからとか、かっこいいからとか、そういうんじゃなくてね。
きっと、美沢ちゃんは、“彼”だから好きなんじゃないのかな」
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