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“父”の言葉が、私の胸の奥に、すーっと入り込むのが分かる。
可愛く思うのがおかしい、とか。
中野さんを見て嫉妬した、とか。
私の頭を撫でる行為にムッと来た、とか。
それは、きっと。
全て。
直太だから。
私の感情の起伏を起こさせてるのは、一喜一憂させるのは。
全て。
直太だから。
直太じゃなくちゃ、そうはならない。
「……でも」
やっとの思いで、口を開く。
「私、もう、手遅れだと思うんです。
一緒に居たかったのに、自分から離れるような事、しちゃったから」
私の一言に、少し間が空く。
「美沢ちゃんは」
優しい声が、ゆっくりと流れる。
「彼に、自分の思ってる事、伝えたのかい?」
私は、首が取れるんじゃないかってぐらい、横に力強く振る。
まるで、子供のように。
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