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布団に入ると、そば殻枕のシャリシャリ音が、どこか懐かしさを帯びて。 今日の出来事と。 母の優しさと。 “父”の言葉と。 直太への思いが、頭に浮かんで。 心地よい眠りにつけそうな予感がして、私は目を閉じた。 直太。 もう、気付いた事すら遅いかもしれないけど。 帰ったら。 明日、帰ったら。 直太に、言葉を向けても、いいかな。 もう、目を逸らさないから。 手を、振り払ったりしないから。 何も言わなくていい。 ただ、聞いてくれるだけでいい。 もう、直太から、逃げたりしないから。    
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