多情

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分かってるよ、と笑って答えると。 無理するんじゃないよ、と再度、促された。 「何かあったら、いつでも帰って来なさいよ。あんたの家なんだからね」 改札を通って振り向くと同時に、言われた母の言葉。 少しだけ、はっとした。 きっと、母は気付いていたんだろう。 私の、様子がおかしかった事。 急に、帰ると言った事。 再婚相手に会う為だけが目的ではなかったという事。 涙が出そうになったが。 下唇を噛んで、無言で頷き、母に大きく手を振った。 じゃあね、と、大声で付け加えて。  
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