多情

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地元へ帰る時に、列車から見渡した景色も。 今では、全ての色が、灰色に見えた。 あれだけ綺麗にキラキラ輝いていた、水田も。 太陽に向かって顔を上げていた、向日葵も。 みんなみんな、モノクロでしか、目に映らなかった。 指定された列車の座席の番号を見つけるのにも、一苦労だった。 動揺しない、訳が、ない。 亜以子チャンの発した言葉だけが、私の頭の中をグルグル回る。 ――…それは、亜以子チャン曰く、昨日の話らしく。 デパートに救急車が止まり、救急隊員がストレッチャーを持って急いで来て。 何かと思って、野次馬心で見に行ったら。 デパートの中庭で倒れてる、直太が、そこに居て。 あっという間に、救急車で運ばれて。 驚いた亜以子チャンが、その場に居合わせた木田さんに聞くと。 運ばれる時には、既に意識がなかった、らしい。  
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