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そんな事を、ドアノブを握りながら考えてると。
大きな雫の涙が、二つ三つと、私の腕にこぼれ落ちて、ハッとした。
そんな感傷に浸る前に。
私にはしなくちゃいけない事があったんだ。
直太の荷物をまとめなくちゃ。
早く、中野さんの手伝いをしなくちゃ。
そして、病院に行かなくちゃ。
勢い良くドアノブを回して、ドアを開いた。
「きゃっ……」
……長い髪が。
微かに、私の顔をかすめた。
その人は少し前のめりになり、私の身体と向かい合うように重なって、倒れた。
当然、私は背中からマンションの廊下に身を打ち。
激痛が体中を駆け巡った。
「いっ……た……」
結構な衝撃だったので、その言葉を出すのにも精一杯だった。
重なった人はすぐに身を起こし、私を見るなり驚いた様子だった。
「ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」
「……大丈夫です、多分……」
そう力なく答えると、その声の主が私の背中に手を回し、起こしてくれた。
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