プロローグ

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         *  「変わらない日常」。とは良く言ったものだ。変わらないなんてあり得ない。いつの時代だって変わり続けているのだから。  「変わらない日常」があるのであれば、それは人が変わらないだけで常に周りは変わっている。  だからこそ、アンタ変わってよ! 「……」  山内美紀(やまうちみき)の携帯の電話回数がニ十三を数えた。  流石に美紀の忍耐力も堪え始めた。  現在は土曜日、時刻は午前十時半近く。あの男ならば確実に起きている筈だ。  彼女が電話をかける相手は、月村未城(つきむらみき)。意味も分からず同じ名前を扱う男子だ。  山内美紀と月村未城が出会ったのは約三ヶ月前。美紀は不良から逃げていた時、図書室に逃げ込んだ。そして落ちたのだ。  落ちたと言っても月村に惚れた訳じゃない。何故か空いていた穴から事実上図書室下に落ちたのだ。  そこで出会い、美紀は不良からの攻撃を相談した。  ひと悶着ありながらも解決してもらい、美紀は考えた。月村と一緒にいよう、と。  そんなこんなで今に至る訳だが、今日は告白の為にニ十三回も電話しているわけではない。そんな事をしたら嫌われるのは目に見えてるので告白ではない事は分かるだろう。何故かというと、温泉に行きたいのだ。月村と。 「……出ない」  ニ十四回目の電話をかけながら二枚のチケットを見る。  温泉に行きたいとなったことにもちゃんとした理由がある。というのも、チケットを貰ったからだ。  月村が発熱した日、帰り道で草木莉夜(くさきりや)に貰ったのだ。  「謎が蔓延ってる」という事で。  だからこそ無理をしてでも呼び出したい上に、無理をしてでも来て欲しいのだ。  別に惚れた訳でも、意地悪な訳でもない。
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