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…とあるマンションの一室で呼び鈴がしつこい程に鳴らされている。しかし、部屋の主は反応しない。その様子は居留守を使っているとかそんなものではなく、ただ単に彼自身が周りに注意を巡らせるだけの状態になかっただけだ。 「…」            悠司は依然、ボーッとしたままで、それ故にドアの開いた音にすら気付かなかった。       「うーわぁ…!」       その驚いた声がした時点で、ようやく悠司は来客に気付いた。  「…和之か、どうしたんだ?」 「アーホぅ!メールも電話にも出ずに、お前こそがどーしたっちゅう話よ!」 「…和之」          「ん、なんや?」       「耳が痛い。あと80デシベルは落としてくれ」 「ほお、友人を心配して来てくれた相手に言う言葉がそれか。えー根性しとるわ、まったく」 悠司につられるように和之も溜息をつく。彼も悠司がここまでへたれてしまった理由を知っている。それを承知の上で現在の悠司のナリに不安と苛立ちを感じている。
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