出会い

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その夜はもう二人は居酒屋にいた。 包帯の下に隠された秘密にもなりそうにない秘密に、興味津津な流華、隠したいわけでもないくせに、少しもったいぶって白い包帯をこれみよがしにしていた洋二、そんな二人の初めての場所は、台湾料理のお店だった。 事の経緯を話す以前に、二人はそもそも出会う脈絡も見当たらず、たまたま、わけあって東京に舞い戻ってきた、人生振出しにも戻れない40歳手前の男と、本来は才女でいいはずなのに、なぜかアルバイターとして某大手出版会社に籍をおく三十路手前の女が、その夜、酒(ビール)を傾け、そのうち煽り、わずかな間にそれぞれの身の上話をすることとなったわけだ。 その夜は、何ごともなく、軽くカラオケなど行ったのかなあ、あまり洋二の記憶にも残らない、されど何となく甘酸っぱい夜だった。
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