プロローグ

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北見が構えにはいる。  投手からみると、本当に嫌な構え。  打てないコースは、まるでない。  初球、インコーナーにストレート。  ギリギリに決まる球に、北見は手を出さない。  スピードガンは138㎞/hを計測。  2球目、アウトローにカーブ。  これも際どく、ボール半分外れたボール。  3球目、体に当たるコースから、インコーナーギリギリに決まるスライダー。  北見は全く仰け反ることなく、呼び込み、振り抜く。  鋭い金属音が響き、ボールは三塁側ベンチに飛び込んだ。  一瞬、冷や汗をかく。  だが、今のは、打ってもファールのコース。  作戦どおりだ。  これで2ー1。  完全に流れを掴んでいる。  北見も、今のファールの意味を悟ったか、苦笑いを浮かべる。  体に似合わず、子供っぽい顔が、舌をだして笑う。  キャッチャーが北見の立ち位置を確認し、サインを出す。  3年間バッテリーを組んだ相手だ。  サインを見なくても、次の球はわかる。  次に投げるフォークを活かすための一球。  インハイのボールのコースに渾身のストレート。  サインは予想どおり。  大きく頷き、振りかぶる。  この一球が、自分の人生を変えることになる一球だとは、知る由もなかった。  もちろん、打席の北見も。
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