プロローグ

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渾身の力で腕を振り抜くと。  思わず目を閉じた。  一寸先の未来を否定したかったからだ。  刹那、鈍く、重い音に、現実に引きずり戻された。  目を開けると、凄惨な光景が飛び込んできた。  立ち尽くすキャッチャー…  目を覆う、バックネット後ろの観客…  飛び散った、ヘルメットの破片…  急いで駆け付けた、相手チームの監督…  そして…  倒れこんだ北見。  スピードガンは、144㎞/hを計測した。  北見は立ち上がり、ニコッと笑顔を、周囲に見せてから、一塁へ歩きだした。  ただ呆然とした。  帽子をとるのも忘れ、立っていた。  スリーフィートラインの始まりまで行ったところで、北見は、また倒れこんだ。  担架で運ばれる北見を、マウンドから見ていた。  そこからは、ほとんど無意識で投げていた。  7回表が終わったときには、スコアは2ー4。  覚えていないが、打たれたらしい。  裏の攻撃に入り、先頭打者が討ち取られたところで、ようやく負けていることに気付いた。 
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