恋のジカク

3/4
前へ
/13ページ
次へ
私の好きなその人は、広野充彦くん。窓際に有る私の席から斜め前、親友の和泉弥生の隣りの席に座っていて、帰宅部で、そこまで格好良いって訳じゃないけれど、それなりに調った顔立ちに、スラリとした長身。 実のところ、私が知っている彼の情報はこのくらいしかなくて……あ、もう一つ有った。 彼は、犬が大好きらしい。特に、子犬が。 お母さんに頼まれたお使いからの帰り道を、しとねの車椅子を押しながら散歩がてらにゆっくりと歩いていた時。その時、それまで単なるクラスメイトに過ぎなかった広野充彦という人間は、相当な犬好きとして私に認識された。 何故なら、丁度土手の辺りで、おそらく彼の飼い犬なのであろう三匹の子犬にじゃれつかれながら学校では見た事もないような優しい笑顔を浮かべている姿を、目撃してしまったからである。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加