日常の選択

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胸からお腹にうごめく柔らかい感触に不謹慎にも浸っていると、近づいてきた優梨香の唇は、僕の左ほほに触れました。 「――――ッ!」 左ほほには、優梨香(中)が付けたナイフの切り傷。そこから流れる血を、彼女は舐めとったのです。 「んっ……おいし」 僕のほほの上で彼女の舌が生き物のように動き、熱い彼女の息が僕の意識を朦朧とさせます。 流れた血を舐めとった優梨香(中)は、ついに傷口に唇を付けました。 まるで傷口にキスをするように、夢中で吸い付いてきます。 「やめ、て……。痛、いよ」 口ではそう言う僕ですが、扇情的な唇と舌の動き、そして鼻孔をくすぐる彼女の香りに、僕の体は逆らうことができません。 やがて、優梨香の唇が離れました。 「はぁ……ん」 なまめかしい吐息を漏らして顔を上げた優梨香(中)の表情を見て、僕の心の臓は急に跳ね上がりました。 目はトロンと焦点が合っておらず、全体に体の力が抜けた、今にも溶けてしまいそうな表情。 今の優梨香(中)は、艶っぽいという言葉でしか表現できません。 「たくみ……」 僕の名前を発音する、甘い声。 そんな表情とそんな声で名前を呼ばれると、妙な緊張感が僕を支配します。
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