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「……ふえ?」
まだ寝惚けた声を、優梨香はあげました。
「ここは……」
優梨香は顔を上げ、見知らぬ僕の家を眺め回します。
不思議の国に迷いこんだアリスの心境は今の優梨香と同じだったのでしょうか。
そして、ようやく優梨香は自分がまたがっているモノに気付くのです。
「こんばんは……」
思わず苦笑いの僕。
そんな僕を数秒間じーっと見つめ、次いで耳まで真っ赤にした優梨香は、
「た、匠さん!?」
飛び上がって叫びました。
「あれ、どうして匠さんがこんな所に? もしかして、ここは匠さん家? でも、だとしたら、どうして私はこんな所に?」
「落ち着いて、優梨香! 頼むから暴れないで!」
優梨香がわたわたと暴れるたびに、お腹の上のむにゅむにゅが僕の理性に“マヒ”の状態異状を引き起こす呪文を唱えるのです!
「とりあえず、ここを降りて?」
僕に言われて、優梨香は自分がマウントポジションを取っていることに気付きました。
「きゃっ、私、いったい何を! すいません匠さん、今すぐどきますから!」
予想以上の俊敏な動きで僕の上から飛び退く優梨香。
「すいませんすいませんすいません」
未だ仰向けになったままの僕の横に正座し、ぺこぺこと謝ってきます。
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