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「言えない? それって何、もしかして執行部の連中からイジメられているとかじゃないでしょうね?」
「いえ、そんなことないです。みんないい人たちです。辞めるのは、単に僕の決断です」
「何か抱えてる問題でもあるの? 君に限ってないとは思うけど、成績が悪いとかは理由にならないわよ?」
「そういうのでもありません。問題というほどのことでもないですけど、こうするのが一番だと思いました」
僕は、深々と頭を下げます。
数秒間の沈黙。
それを破ったのは、小さな会長さんのため息でした。
「……わかったわ。好きにしなさい」
「お姉ちゃん!?」
「仕方ないでしょ、恵。天谷くんが辞めたいって言ってるんだもの。
それに、自分で責任も持てない人にこの仕事が務まるとも思えないし。私はもう止めないわ」
会長さんの言葉が胸に刺さります。
言い返す言葉もありませんでした。
「でもミノくん、まだ仕事残ってるよ?
そうだよ、ほら、仕事に行こ? そしたら考えが変わるかもしれないし!」
恵ちゃんの言葉に、僕は首を横に振ります。
「もう仕事はないよ。全部終わってるから」
「……まさか、早く来てやってたの?」
僕は首を縦に振ります。
すると、恵ちゃんはついにこらえていた涙を流し始めたのです。
「ミノくんは、卑怯だよ……」
恵ちゃんの言葉が胸に刺さります。
やはり、言い返す言葉はありませんでした。
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