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体育館裏一一一一。
それは非行に走った少年少女達のたまり場である。
『ツッパリ』とか呼ばれる人がこぞって休み時間や授業をふけて過ごす憩いの空間だ。多くの学校には決まってこういう場所があり、そのまた多くが立ち入る事を禁忌とされている。
進学校といえど例外ではない。
春日学園高校でも、ツッパリこそいないが、むやみな立入は極力禁止である。禁止といっても鉄格子や金網で閉鎖されてはいないものの、ごくたまに喫煙した形跡が遺っているため、疑われるのを避けた生徒達自身が立ち入りを自粛するようになったのだ。
しかし、体育館裏とは多目的な所である。校内では人目に付きにくい希少な場所なので、ある想いを持った者はその決意と共に忍んで訪れ、勇気を試すのだ。
「お願いします!」
少女はハガキ大の封筒を少年に差し出した。
薄いピンク地にハートのシールが貼られ、何度も練習したであろう宛名が表面に『~様へ』と記されてあった。
一年E組、朝村浩司は、初めての体験に戸惑いを隠しきれない。
「あ……その……」
「お願いします。私には朝村くんしかいないんです」
「急にそう言われても……」
少し整理して考えてみる。
まず、彼女との面識は今日この時を含めて二回目である。一回目の時も顔を合わせたくらいで、初対面に近い相手だ。
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