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貴史さんがいなくなったのは、確か俺と桜が小学校に上がる前だったはずだ。
「そういえば、クリスは?」
「クリスちゃんなら図書館に行く、って言って出ていったわ」
「そうですか・・・・・・」
響子さんは紅茶を一口飲むと話を切り出した。
「あの人がいなくなって、桜にも淋しくさせちゃったわね」
桜はああみえて、裏ではかなり淋しかったのだろう。
「実は桜には話してない事があるの・・・・・・」
「話してない事って?」
響子さんは紅茶をテーブルに置くと、
「あの人が事故にあった時の話なんだけど・・・・・・」
「あの人が事故に遭ったあの日、桜が幼稚園で熱を出していたの。私は仕事があって迎えに行けなかったからあの人に迎えに行ってもらったの」
響子さんは続ける。
「その道であの人は事故に遭ったの」
なんだって?
それを確かに桜に話してしまうとあいつの事だ、自分のせいで貴史さんを死なせてしまった。そう思うはずだ。
「そう、それが恐いから話せないの」
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