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今から十年前──冬の夜に悲劇は起こった。
「此処に隠れて居なさい!!」
「おかあさん!」
母親は娘を部屋へと隠した。
暗闇の中、少女は不安と恐怖で躯(からだ)が震える。
「おとうさん……おかあさん……」
少女の声が、暗闇に静かに響く。
そんな彼女の耳に、両親の断末魔の悲鳴が聞こえた。
少女は部屋を飛び出し、急いで両親の元へ向かう。
そこには、部屋一面に大量の血が流れ、飛び散っていた。
「……っ」
光景に、少女は声を失う。
彼女の目の前に、血の海の中で両親が血を流し倒れていた。
「おとうさん!おかあさん!」
母親に駆け寄り、泣きながら躯を揺するが動かない。
両親は、既に息たえていた。
泣きじゃくる少女の前に、誰かが立っている。
彼女が泣きながら顔を上げてみると、悲しい瞳をした少年が立っていた。
──ダレ?
少年の手には鮮血が、たっぷりと付き、顔と服にも鮮血の返り血が掛かっていた。
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