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少年の口に、純白の鋭い二本の牙があった。
その牙を見た少女は解った。
この少年が『吸血鬼』だと。
──アナタ ダレナノ
──アナタガ コレ ヲ ヤッタノ?
──イヤ ワタシ モ コロサレチャウ
すると少年は、その場にしゃがみ、手を伸ばす。
少女は殺されると思い、固く目を閉じた。
しかし、違った。少年は、そっと少女の頬に触れただけだった。
それから自分が着ていた白いコートを彼女に掛け、何かを呟き姿を消した。
少女は少年が掛けてくれたコートを握り締める。
いきなり起こった状況にショックで、気を失ってしまった少女だった。
──ドウシテ コンナコトニ ナッタンダロウ
──ドウシテ オトウサン ト オカアサン ガ コロサレタノ?
──ドウシテ ワタシ ヲ コロサナカッタノ?
──ドウシテ ヴァンパイア ガ ココニイタノ?
──ドウシテ ドウシテ ドウシテ……
気を失う直前に少女は、そう思いながら気を失った。
白いコートを固く握り締めたまま。
そして、次に目覚めた時、少女の記憶は……
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