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『――…ここが有名な誰もが恐れるボンゴレ本部、か…』
秋風が散りゆく落ち葉を舞い上がらせ、冷たさを感じさせる湖畔のなか。
辺りは静かな林に囲まれていて、一見すれば王子様でも出てきそうな館の門前に佇む黒スーツに身を包む少女が一人。
『これでマフィア最強というのだから不思議だな。とりあえず…』
そして、インターフォンに指を翳した瞬間、
「君が新しい俺の秘書?」
気配はなかった。
しかし、振り向いてみれば木の上で読んでいたのだろう本を閉じ、こちらを見ていたのは
『ボン、ゴレ…10代、目…っ』
「そう。あんまり遅いから向かえに来た」
『っ…しかし、約束の時間までは残り一時間もありますが』
「俺が会いたかったんだから、早く来るのは当然だろ?」
そ、そ…そんなの身勝手過ぎるっっ!!!
緩やかに靡く薄茶の髪と、同じく温かな木漏れ日の様な瞳。
スラリとした体型に、モデル顔負けの整った顔立ち。
黙って立っているだけでも女は放っておかないだろう。
しかし、口を開けば毒舌家とは聞いていたが…これでは単なる我が儘だっ。
「…ね、俺の秘書になるんだったら…もちろんこんなのも平気だよね?」
『?なんでしょ…っ』
ボスの問いが分からず、不用意に首を傾げてしまった瞬間。
目の前に重なる影。
ルージュを彩った唇に、触れたのは…柔らかな唇。
事態の把握に頭がついていけない私に、ボスは離れると私の唇に指を這わせて
「………ふぅん、もしかしてファーストだった?それはそれは…ご馳走様」
その言葉が耳に届いた瞬間、私は真っ赤な顔をしていただろう。
そして――
気付けば握り締めていた拳を解き、スパァンッ!!と気持ちのいい音を立ててボスの横っ面を殴っていた。
地面に倒れ込み、口端から血を流して私を睨み付けるボス。
そして、自分の手の痛みに理性を取り戻し、睨みに真っ青になる私。
そして、これからの日々を考えるだけで、少し泣きたくなるのでした。
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