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着いた場所は、1つ年上の3年生の教室。
その教室にずかずか入り込む私をよそに、2人は先輩達が恐くてドアの前でしどろもどろしていた。
何てったって、この高校は上下関係がすこぶる厳しい。
2人を放って、キョロキョロとある人を探す。
そんな私に気付いた先輩は、大きく手を振ってくれた。
「あ、アイ先輩ー!聞いてくださいよ!」
アイ先輩は3年生の中心。
細くて背が高くて、とびきりの美人!
パッチリした目に、薄いのに栄える化粧で茶髪のセミロング。だけどブリブリしてなくって、この高校のアイドル的存在。
私の憧れの人だ。
そしてアイ先輩に逆らえば、もちろんイジメられる。だからアイ先輩に文句が言える人なんて、1人もいなかった。
アイ先輩は座ったら?と言わんばかりにイスを差し出してくれたので、笑顔で座った。
「聞いてくださいよー!
ユウナったら酷いんですよ」
それからさっきの出来事を、先輩に話した。
もっとも自分が可哀想になる様に尾鰭を付けてね。
「こんな可愛いハナにそんな事言うなんて、ウザいなあ!
やっちゃう?」
そう言いながらイタズラっぽく笑うアイ先輩は、やっぱり綺麗な人だった。
この人と仲良くしといて良かったなあ、と再確認しながら私も笑顔で返す。
「ありがとうございます。でも大丈夫です。
ちょっと愚痴聞いて欲しかっただけなんです」
そう言う私の顔を、心配そうに見つめるアイ先輩の瞳に吸い込まれそうです・・・
我に返って急いでお礼を言ってから、まだドアの前にいる2人の所に戻った。
「3年生の教室に普通に入れるなんて、やっぱりハナはすごいね」
「アイ先輩と仲良しなんていいなあ。私も仲良くなりたい!」
自分の教室に戻る途中、羨ましそうにニコニコ話しかけてくる2人を見ていると、やっぱり気分は悪くない。
私の讃美歌に聞こえる。
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