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いつから僕は膝を抱えここにいるのか。
胸にしんしんと降り積もった悲しみが、心臓を締め付ける。
―ねぇ見て凪斗―
心の中で繰り返すせつない声。
この声を聞く度、心臓が縮まり息苦しくなる。
僕は大事な事を忘れてる。
声は囁き続ける。
―幸せの色て知ってる―
幸せの色?
少女は確かにそう呟いた。
―ちが~ぅよ、幸せの色だよ―
繰り返し囁き続ける甘い吐息。
―みけんにこ~んなシワ寄せて面白い―
少女の息遣いが心を刺す。
わからない
わからない
わからない
少女が誰か思い出せない。
それは取り換えしが付かない程、暖かい木漏れ日だった。
心の中にぽっかり開いた空白を埋めるように、少女は囁き続けた。
―いつか届くといいな―
―凪斗の心に―
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