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冷たい滴が頬を伝う。
彼女の事を思い出そうとすればする程、決まって、体は拒絶するように痙攣を起こした。
確かに彼女は存在した。
それは確信となって、凪斗の胸を締め付けた。
―いいよ―
―約束―
―夢の中で会いに来て―
優しい約束。
その時一瞬彼女の顔が浮かんだ。
目から大粒の涙を流し、必死で嗚咽を堪える口。
肩を小刻みに震わせ、笑顔を作ろうとしてうまくいかず、泣き顔を腫らす。
「待ってマユ」
思わず叫んで我に変える。
「マユ・・・」
確かにそう言った。
マユ。
自分の口から出た言葉に挨拶する。
「君はマユて言うんだね」
「よろしくマユ」
そこまで言って、激しい目眩に景色が逆転する。
視界はぼやけ、黒い蛆が体のそこから這い出して、肌と言う肌を浸食していった。
遠のく意識の中つぶやく。
マユ・・・
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