12.未来の結末

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あれから、もう何年の月日が過ぎたのだろうか。 今私は、あの赤い花畑に訪れている。 私の体は衰え、年老いた姿だった。 あの日、西都さんが死んだ次の日から、私は手紙に書かれていた通りにしっかり働き始めた。 友達も出来て、夢だった子供に本を読むことも叶えることも出来た。 西都さんのお墓も知らないし、死体も見ていない。 本当に西都さんが死んだのかさえ分からない。 分かっているのは、西都さんが私の前からいなくなり、きっとまた会えると感じたことだった。 自分の初恋は、未だに続いて終わっていない。 結婚もしていないし、他の男性とも交際を一度もしていない。 でも、私を母と呼んでくれる子がいる。 親のいないその子を私が引き取って、育ててきたのだ。 西都さんと似ていたとかではなく、きっと私は寂しがったのだろう。 今はその子も一つの家庭を持ち、妻と子供と共に幸せな人生を歩んでいる。 私は今この場に立って、西都さんを待ち続けている。 ここで待っていれば、西都さんに会える気がした。 年老いた私の今の姿を見た西都さんは、会った時に何て言うのだろうか。 ―――それでも……嫌われてもいいから……会いたい。 私が死ぬ前に、一目でいいから会いたかった。 ―――――そして。 ふと前を見てみると、そこには私に手を振っている青年の姿があった。 あの日、楽しくて幸せだった若い頃の西都さんだとすぐにわかった。 目を瞬き、その姿を見て呟く。 「……西都……さん」 そして彼に、自分の手を伸ばす。 それは皺がなくなっていて若い頃の私の手だった。 「西都さん」 声も若い頃に戻り、愛しい彼の名を呼ぶ。 西都さんは何かを言っているが、聞き取れなかった。 でも、私にはわかった。 西都さんは私の名を呼んでいる。 駆け足で彼へと向かってゆく。 涙が止まらない。 そして、もう離れることなんてないのだから。 「西都さん……愛しています」 ただ、言葉だけをを紡いで……。 ―――ずっと……貴方と一緒に……。 そして彼女は、あるはずのない幻想と共に、赤い花達に囲まれながら、一人で永遠の眠りについた。 ……… ――完――
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