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「……あなたのお父さんが亡くなる直前に、僕に遺言を残されました。僕はあなたのお父さんの部下でしたからね……」
西都さんの表情は暗くなり、何かを思い出すかのように目を瞑りながら言う。
「……まずは憐香さん。あなたのことです。……あなたのお父さんはこう言っておられました。「娘の憐香に財産を全て明け渡す」と……」
「そうなんですか……」
お父さんは、私の後々の苦労のために財産を残してくれた。でも、私はお父さんがいてくれればそれでよかったのに。
「……あと、もう一つ伝言があります。お父さんは、あなたに「幸せになれ、それとごめんな」と言っていました。……それから息を引き取って……」
私はその言葉に涙が溢れそうになった。
「馬鹿なお父さん……謝るくらいなら最初から……」
「……それに僕もあなたのお父さんに頼み事をされていて……」
西都さんの言葉に、私は不思議に思って聞いてみた。
「……西都さんが?一体何を……」
「……実は、あなたのお父さんに「娘が立ち直るまで側にいてやってくれ」と言われたんです」
彼は決意を秘めた眼差しで、私を見つめている。
しかし、お父さんが私を任せるほどの人だ、かなり信頼されていたのだろう。
でも、それがお父さんの遺言でも西都さんには迷惑をかけたくなかった。
「……いいえ。それはいいです。……西都さんにもご迷惑をおかけしますし……」
でも、西都さんはこう言った。
「……僕は憐香さんの手伝いをします。……いや、させてください!お願いします!」
西都さんは頭を下げながら言い放った。
「……何故そんなに私の手伝いを?……お父さんの遺言のことならもう大丈夫ですよ。私はお父さんの死を受け入れましたから……」
「……それもそうなんですが……憐香さんのことで一つ問題がありまして……」
―――問題?何の問題があるんだろ?
私は疑問に思ったことを西都さんに尋ねてみた。
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