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そして、平和条約が結ばれる前日、僕は重治さんに呼び出された。
「重治さんどうしたんですか?急に呼び出したりなんかして……」
今は平和条約の騒ぎで、自国の兵士達は全員駆り出されていた。
そんな時に重治さんは僕を呼び出し、真剣な表情で黙っているばかりであった。
「今日僕を呼んだのは何故ですか?何もこんな時期に……」
「……紅月。本日、この隊は解散となった。……後の人生は好きなように生きろ」
予想外の言葉に、僕は一瞬の間、意味が理解できなかった。
「……本気で言っているんですか、重治さん?」
再度確かめながら、僕は重治さんを見つめていた。
「ああ、お前は軍の中でも優秀だったから問題はない。軍でも保証はしてある」
重治さんは本気のようであった。
「……わかりました」
僕は頷きながら、重治さんに答えた。
「……これから何かしたいことでもあるのか?」
重治さんにそう問い掛けられ、僕はあの誓いを果たすことを告げる。
「……黒条さんの娘さんに会おうと思います。……それで落ち込んでいたなら遺言の通り立ち直らせて、僕を……殺してもらいます」
重治さんは一瞬驚きの表情を見せたが、すぐさま冷静さを取り戻した。
「紅月……今のお前は自暴自棄になっているだけだ。少し落ち着いたらどうだ」
「僕は冷静です。何と言われようとも、この誓いを果たしたいと思っています。……重治さん。それに関して貴方に頼みたいことがあるんです」
重治さんは呆れた表情で僕に言葉を返す。
「……なんだ?」
「黒条さんの娘さんが僕を殺した時、罪にならないように手配してください」
重治さんは少しの間黙り込み、僕にある提案を出してくれた。
「……これで大丈夫だと思うぞ」
それは完璧な計画だった。
「……僕が黒条さんの娘さんに薬を飲ませた時、それを実証するために重治さんへ手紙を証拠として残せばいいんですね」
「……ああ」
気が進まないのか、重治さんは気の沈んだ声で返答した。
そこで僕は、重治さんにある疑問を投げかけた。
「……重治さん。僕を止めないのですか?」
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