11.君への想い

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僕は近所の公園から憐香さんの家へ通っている。 何故そんな所に住んでいるかというと、他に住むところがなかったからだ。 いや、ホテルくらいはあったが、金を無駄遣いしたくはなかったし、この公園からだと楽ができる。 それに、憐香さんの身に何があっても、すぐに駆けつけられるから便利な方だ。 そして、先ほどからずっと感じていた視線に声をかける。 「出てきたらどうですか?……もうバレてますから」 そうすると、木の陰から軍服を纏った青年が姿を現した。 「いつから気づいていた?」 「憐香さんの家に入る前、何か視線を感じました。……そして家を出たときにわかりましたよ。……"影流"」 この影流という青年は、僕が所属していた隊の仲間だった者で、隊が解散してから軍隊に残ったと聞いていたけど、今この場にいる理由がわからなかった。 「あの女にどうやって自分のことを説明したんだ?」 「それは重治さんに教えてもらった通りに説明しました。……お父さんの遺言を受けたって」 その通りに言えば、納得してもらえると助言された。 ―――嘘は……あまり言っていない。本当のことでもないけど……。 「それより、来る前に通ったあの赤い花畑、誰が育てたんだ?」 「あれは黒条さんが蒔いたものです。……別に誰も世話なんてしてないはずですけど……」 確かに、あの花畑は見事だった。 誰かにあれを見せたい気持ちはよくわかる。 「……そうか」 影流はそれだけを聞き、もう用はないと言わんばかりに背を向けた。 「影流……これからも、僕を見張るつもりですか?」 そう聞くと、影流は振り返りながら言う。 「違うさ。お前達二人を見張るんだ。……死ぬなんて俺が許さない」 僕は心配してくれる影流に、心の中で感謝した。 ―――ありがとう……影流。 そして影流は何処かへ行ってしまった。 それから僕は影流を見送った後に、この前に行った山の花畑を思い出す。 ―――あの赤い花……憐香さんによく似合ってたな。
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