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そして僕は、憐香さんに殺されることに決めた。
それを事前に重治さんにも伝えておくことにする。
―――重治さんに言っておかないと、後が片付かないからね……。
計画を作り上げ、重治さんにもアドバイスをしてもらったりと、準備は完全に整った。
それらは、憐香さんの引っ越しの準備が始まる前に、全て済ましてある。
家を売ったその日、憐香さんと僕は公園のテントで一緒に寝ることとなった。
正直、僕はとても嬉しかった。
だって、好きな人と一緒に寝れて、嬉しくない奴なんているはずがない。
―――そんな行為はなかったけど……。
ただ、憐香さんはどこか悲しそうだったことだけは覚えている。
あの家を売ったこと、後悔はないと言っていたが、未練はあったはずだった。
両親との数少ない思い出や自分の今までの日々がたくさん詰まっているのだから、それを自分のために手放そうとする彼女は強いと思った。
それだけの決心をするのに、苦しまないはずがない。
―――でも……それを助けてはいけない。
そうすることで、彼女は今よりもっと強く生きていける。
都合よく助けてしまっては、後に甘えとなってしまうからだ。
それを重治さんに言われた。
だから、僕も辛いけど助けたりはしなかった。
彼女は強いと思っていた。
それが、強がっていると最近気がついた。
悲しむ表情を僕に見せたりはしない。
黒条さんの遺言で訪れた僕を見て、死んだお父さんのことを思い出さないはずがないのに。
でも、泣いた顔は一度だけ見たことがある。
僕が勉強をしている憐香さんに、何かしてあげたいと思い、一日を使って料理を作った時だった。
あの時、何度も休憩するように言ったが、憐香さんは休もうとはしなかった。
それに、あの失敗した料理を美味しいと言って食べてくれた。
泣く憐香さんにどうしていいかわからず、肩を抱こうとしたが、恥ずかしさもあって頭を撫でることしかできなかった。
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