24人が本棚に入れています
本棚に追加
それでも、泣き止んで微笑んでくれた時は、かなり可愛いと思ってしまった。
その時、それで再確認させられてしまった。
僕はこの人に恋をしているんだなって。
憐香さんがテントで一緒に寝ている時、その寝顔が辛くなった。
見ていると心地いい、でも、無防備過ぎるのはどうかと思う。
僕はこの人に殺されたい。
いつ死ぬか分からない戦場で生きてきたせいか、愛した人の前で……その人に殺されることが幸福だと思ってしまった。
―――けど、僕はまだ生きていたい。憐香さんとこうしていてもいいかもしれない。
まだ黒条さんのことは言っていない。
これからも、こうして憐香さんと暮らしていきたかった。
けれど、そんな矛盾したことを考える時間は、終わりを告げた。
次の日、憐香さんに叶えてあげられることはないかと言われたので、デートがしたいと答えた。
憐香さんは知らないけど、僕は憐香さんが好きだから。
死ぬ前に、一度でもいいからしてみたかった。
けど、デートというのはどういうものなのか知らなかったから、お茶を飲んで、服を見て、憐香さんにぬいぐるみを買ってあげた。
僕が次に何処へ行こうかと考えていた時、憐香さんがある店に目を奪われているのに気がついた。
僕は何を見ているのかと聞くと、あからさまな態度だったので、すぐに理解できた。
憐香さんの視線の先には、店頭に並んだぬいぐるみが置いてある。
欲しいのかと尋ねると、慌てて否定する憐香さんの態度は見ていられなかった。
「買ってあげましょうか?」
僕がそう言うと、子供のように喜んで、可愛らしかった。
僕は憐香さんに本気で惚れていた。
その時は感じなかったけど、今なら分かる気がするよ。
それから憐香さんとある約束をした。
これから頑張って、挫けず生きてゆくこと。
あの時、何で僕はあんなことを言ったのだろうか?
もしかしたら、この後に起こることを直感していたのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!