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そして、その時が来てしまった。
「……お父さんは何をしていたんですか?」
それを聞かれた時、僕の時間は一瞬だけ止まったような気がした。
「本当に……お父さんはスパイに殺されたんですか?」
そして僕は、この楽しかった生活を諦めた。
近くのホテルで話そうと言って、憐香さんを説得した。
そこには、事前に用意していた兵士が待機している。
僕が死んだ時、憐香さんは眠っているはずなので、引っ越しした憐香さんの家へ運んでもらえるように言ってあった。
もう必要がなくなるかなんて思っていたけど、こうして実行する時が来た。
もしも憐香さんがこの質問、またはこれに繋がる質問をした時、このホテルに来る予定だった。
―――……計画通りだ。
そして僕は、死を決意した。
一応、何故そんなことを聞いてきたのかを尋ねた。
―――まぁ……気づいて当たり前だよね。
憐香さんは頭も良かったから、それに関して気づくのは時間の問題だった。
―――でも、僕が死のうとしていることまでは、気づいていないようだから……良かった。
先日、僕は影流に問いかけられた。
「……紅月。あの女がお前を殺して罪の意識で苦しむことになったとしても……それでも意志は変わらないのか?」
影流の言いたいことは、僕にはとても分かる。
「影流……。僕は……たまに殺した相手の夢を見るんですよ」
それは悪夢だった。
何度も僕が殺した相手に殺される夢。
「けれど、憐香さんもこれから先を生きてゆく中で、人を殺したくなることがあるかもしれない」
今の時代、そんなことはよくあることだった。
「その時に、僕を殺したことによって、それが抑えられるかもしれないと思うんです」
僕は憐香さんに、確かな将来を与えてあげなければいけない。
「だが、お前を殺した罪が残るぞ?」
影流はしつこく僕に説得をしてくる。
―――それだけ僕に死んでほしくないのかな?……そうだと少し嬉しい。
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