11.君への想い

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次に僕は、お父さんは帰って来ないことを告げる。 憐香さんは悲しそうな表情となり、声にならない声を上げる。 それだけで、僕は辛くなった。 今僕は憐香さんを苦しめている。 守りたかったはずの、愛したこの人を……。 それでも僕は続けた。 「どうしてかわかりますか?」 ……… 「……僕が貴女のお父さんを殺したからですよ?」 ……… 「憐香さんのだーい好きなお父さんは僕が殺しちゃいました」 これだけ言っても、憐香さんは動こうとしない。 憐香さんの手にはナイフが握らせてあるのに、それで僕を刺そうとしない。 きっと、それをナイフだと認識できないでいるんだろう。 そして僕は、さらに追い討ちの言葉を言う。 言いたくもない、嘘の言葉。 「えーっと何か最後に言っていましたね。何でしたっけ?済まないだったかな?もうそんなこと覚えてないですけどね!あはははは……はは」 今でも僕は黒条さんの言葉をしっかりと覚えている。 「あ……んな人……死ん……で……当然……」 ―――憐香さん……早く……僕はこんなこと……言いたくない。 涙まで出てきて、上手く言葉が出せない。 憐香さんと話す最後の言葉になるかもしれないというのに……。 ―――――その瞬間。 憐香さんはナイフを振り上げ、僕の胸元に狙いを定めた。 ―――避けれる……けど、避けたくない。……これで良いんだ。 僕は瞳を閉じて、その時を待つ。 そして憐香さんはナイフを振り下ろし、僕の胸に刺さった。 「これで……よかったんですよね……」 それは誰に言ったのか、僕ですらわからない。 体の中から血が大量に流れ出る感覚が、何故か心地よく感じる。 ―――僕の三つの誓いは果たせた……。 毒が僕の体を蝕み、息絶えるのは時間の問題。 「君を……守ることができた」 憐香さんは一人でも生きてゆける。 「僕は……君を最後まで愛することが……できた」 僕は君を愛することができて、幸せだと感じる。 「そして……最後は君に殺されること……」 君の手で……愛する君に殺された僕に後悔は一つもない。 そして僕はそれだけを呟き、真っ白な意識へと包まれていった。 ………
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