2.遺言

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―――――――――――――――――――― 「……今何時かしら?……それにこの匂いは……」 私は目を覚まして美味しそうな匂いがするキッチンへと向かった。 「……えっ!?」 キッチンには見知らぬ赤毛の青年が人の家のキッチンで勝手に料理をしていた。 私は未だに覚めぬ目を擦りながら青年に問いかける。 「あの……」 私の声に気づいた青年は振り向きざまに挨拶をする。 「あっ……憐香さん。おはようございます」 「……?。どちら様でしたっけ?」 青年は私の言葉に顔をひきつらせながら言う。 「……寝ぼけているなら顔を洗ってきてください……」 「……あっ!ごめんなさい西都さん!私……寝ぼけていたみたいで……」 やっと目が覚めた私は彼に謝罪する。 そうだった。この人は私にお父さんの遺言を伝えるために来てくれていたんだった。 失礼なことをして私は恥ずかしくなって顔が赤くなっていた。 「思い出して頂けましたか?」 「……はい」 「それは良かったです。もう少しで食事ができるんで待っていてくださいね」 何で勝手にキッチンを使っているかは後で聞くことにしよう。 ―――それにしてもいい匂いだなぁ…… 私は彼が作る料理の匂いに感激していた。 ―――――その瞬間。 ……ギュルルゥゥゥ……グゥゥッグゥ…… 彼の料理する手が止まる。 私は料理の匂いにお腹を鳴らしてしまった。 そして二人の間に沈黙が続いた。 ―――恥ずかしい……死にたい…… 「……くっ!あははははははは!すごい音ですね?憐香さん?そんな腹の音聞いたこともないですよ」 もう私の中には羞恥心より、怒りの方が大きくなっていた。 「いや……すいません。笑ってしまって……っぷ!」 ―――……殺しちゃおうかしら? 私は椅子を手に取り、彼に向けて投げつけた。 ……ゴン! 「うわっ!危ないですよ!落ち着いてください!謝りますから!」 彼は投げつけられた椅子をよけて、私に言う。 「……わかりました。次はないですよ?」 彼は安堵のため息を吐き、料理の続きをまた始めた。
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