序幕

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そっと、ヴェールが開く。 ふわりと、丁寧な手つきで後ろへとたなびかせる。 視界が開けたのを恥じて思わず目を伏せた。 腕を、大きな手に包まれる。 紅潮しただろう頬を見せまいとさらに俯く。 (顔を上げてよ、奥さん) ますます照れてしまったけれど、俯いたままじゃ始まらない。 恐る恐る顔を上げたら。 にこやかに笑う、彼の幸せそうな顔。 出会ってから今まで、いろんなことがあったね。 運命に導かれた日々だったね。 たくさん悩んで。 間違いもあって。 いっぱい泣いて。 でも、最後には笑えていたね。 そんなふうに過去を振り返りながら、私も彼を見つめた。 彼の幸せそうな顔が。 だんだん近づいて。
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