少年ナンパ

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更衣室には、スタッフの多さを伺うようにずらりとロッカーが並んでいる。 カーテンで仕切り、とかもないので、女子高の体育更衣室のようだ。 一種の気恥ずかしさもあって、誰かが来る前にと素早く着替えを済ませる。 今では一種の特技になっている。 髪をほどきながら休憩室に戻ると、後輩がちょうど立ち上がったところだった。 「お疲れ様、気をつけて帰ってね」 「あ、はい」 カバンをしょって帰宅準備をする後輩をよそにジュースを飲み干した。 「・・・先輩」 「ん?」 「帰り、大丈夫っすか?良かったら俺、送って帰りますよ」 「・・・あ、うん…いや、いいや」 この時、はっきりいってくたくただった私に願ってもない提案だった。 後輩は車なので家まで一直線に送ってもらえる。 だけど私の家は山道なので。 さらに後輩の家より遠いので。 そんな理由を作った。
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