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苦し紛れにそんな理由を話すと、後輩は笑った。
「そんなの別にいいですよ」
「いや、大丈夫。ちゃんと直通のバスあるし」
それでも、後輩は納得しきれてなかった。
私はますます苦しくなる。
「ほ、ほら!彼女いるのに他の女の人乗せちゃダメだよ!」
「あ…はぁ…」
後輩は表情を曇らせた。
確かに、今のは正当な言い訳じゃなかった。
「とにかく、大丈夫だから!」
「…わかりました。気をつけてくださいね」
「うん、ありがとう。お疲れ様」
「お疲れ様です」
そうして、後輩は帰路に着いた。
ちょっと、好意を踏みにじった感が否めない。
それでも、後輩の車には乗れなかった。
――乗りたくなかった。
正直、何考えてるんだろう、とまで思った。
後輩は半年前からここで働いていて、その前から彼女と付き合っている。
かれこれ1年の仲ではなかったか。
そんな彼女を差し置いて、しかも私と2人きりになることを承知で車に乗せるだなんて。
(ちょっと無責任だよ…)
でも、本音を言ってまで逃げるつもりじゃなかった。
もっと言葉を選べばよかった。
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