蘇ッタ 死ノ歌

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蘇ッタ 死ノ歌

「ただいまー」 「お帰り。」 あれから二時間、刹那は叔母さんに用事を頼まれて帰った。 妹の紗弥が靴を脱ぎ捨てて廊下を走りながらリビングに入ってきた。 「おにいちゃん、ただいまー」 紗弥がいつもの笑顔で僕に抱き付く。 「お帰り。今日は友達と遊べた?」 「うん。あたらしいうたもおぼえたんだよ。」 「どんなの?」 「ひみつー。おにいちゃん、おなかすいた。」 「母さんに何か作って貰おうか。父さんは?」 「じぶんのへやだとおもうよ?」 僕は、そう、と答えて残っていた学校の課題に手を付けた。 僕と紗弥は十一歳離れていて、僕はよく紗弥の面倒をみていた。 「晋次ー?」 母が慌ただしく僕を呼ぶ。 「どうした?」 「ちょっと足りないものがあったから母さん買い物行って来るから、紗弥と留守番してて。」 「うん。わかった。」 僕はシャープペンをペンケースになおし、返事をした。 「父さんに一応声かけとけば?」 「そうするわ。」 母さんは財布を鞄に入れ、肩に掛けて父さんの部屋に向かった。 「あなたー?」 「…」 「あなた?入るわよ?」 ガチャ… 「―…!!」 硝子越しに倒れ崩れる母さんを見て僕は廊下に出た。 「母さん、どうした?」 僕は母さんの視線の先をみた。 「…!!」 「おかあさん?おにいちゃん?」 紗弥が不思議そうに問いながら僕達の方に向かって来る。 「紗弥!!来るな!!」 紗弥は僕の怒鳴り声にびっくりしたのか、泣き出してしまった。 母さんは声にならない声を漏らしながら震えている。 「母さん、紗弥と二階に行ってて…」
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